感熱紙の裏側

舞台やらイベントやらの感想をぽつぽつと。節操はないです。思ったことを思ったままに。

20200218 カプティウス

安西慎太郎一人芝居 カプティウスを見てきました。

徒然なる感想というか思ったことを思ったままに。
ネタバレ並びに、脚本に対して一部否定的な感想があるのでご注意ください。


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総評:凄いと面白いは必ずしも両立しえない

4万字(?)近い言葉に感情と意味を乗せて吐き出す技術的な凄さ、とりわけ安西さんの純粋さから発せられる危うい生命力には大いに感動しました。
たった1人、独白という形でも観客の集中を途切れさせない求心力は本当に凄い。
ただ一方で、カプティウスという舞台は私が見たかったものかと言われると首を傾げ、面白かったかと言われると諸手を挙げられないのが率直な感想。

 

舞台美術
最高にかっこよくて素敵でした。
モノトーンで纏められた小道具に、舞台の光を反射する天井の鏡(っぽいアルミ板)。
シンプルだけれど華やかで、想像力を掻き立ててくれる。安西さんのお芝居で監獄にも精神病棟にもビルの屋上にも精神世界にもなりうる。何処でもあって何処でもない場所。
照明も素敵で、opは月並みな言葉だけれどスタイリッシュだなあと思ったし、感情に合わせて強くなったり色が変わったりとお芝居に負けず劣らず繊細でした。

 

お芝居
安西慎太郎やっぱりすごいなあと思うわけで。
台詞量もそうなんだけれど、感情の緩急の付け方が凄い。
静と動がスパン、と一瞬で切り替わる。
なんの予兆もなく切り替わるので、次の瞬間彼がどんな感情を発してくるか分からないし読めない。落差があるからこその鮮やかな生命力。メンヘラな役が似合うなあと言うのもここら辺が大きく関わってる気が個人的にするし、安西さんのお芝居で1番好きなポイント。
今回のカプティウスでも、静と動が鮮やかで、ああ、舞台を生きているなあとしみじみ思いました。生命力を浴びた。

 

脚本

面白くないかと言われれば、太宰治人間失格という本の解釈、感想としては面白いと思った。
伝えたいことはわかるし、ラストだって言いたいことと行動の矛盾。即ち、生きろと言いながら死んでいく矛盾のようなものが見えた気がする。あくまで個人的な解釈だけれど、ラストシーンは身支度を整えて、笑顔で身投げしているように見えてならなかった。前向きでも後ろ向きでもない死というか……。太宰的だなあ、と。
そういう意味では、物語として決して面白くない訳では無い。

それでも、脚本から透けて見える主張が私にはノイズのように感じられてしまった。
今回の脚本、脚本家と演者双方に思考とキャラクターが似通っているせいか脚本家の思想を演者が代弁しているように見えてしまったから。これに関しては表現の仕方の問題で、良い悪いはないと思うけれど、あんまり直接的に自分の言いたいこと、思想をまるっきり役者に言わせてしまうのはなんだかなーーーっていう超個人的感想。

あと、私は強い言葉があまり好きでないというか直接的な表現を好まなかったりというのも諸手を挙げて好きだと言えない一因。

真っ直ぐな言葉がピカピカしすぎて上手く咀嚼できない性質だから、ここはもう本当に個人的な好き嫌い。唐揚げにレモンかけるかけないみたいな感じなので流してください。

 

万歳三唱して好きだった!とはなれなかったけれど、主題だったり伝えたいものがある作品は感じ方はどうあれ、考えることを促してくれるなあ、と改めて思いました。

まだ26歳とは全く思えない安西さんのこれからもすごく楽しみです。5年、10年後どんなお芝居をしているか楽しみで仕方ない。いい役者さんだなあと思った1人芝居でした。